遺産分割や相続に関する法律の改正が行われ、2023年4月から順次施行されています。2024年4月からはもっとも力が入れられた「相続登記の義務化」も施行される予定です。これらにより、遺産相続協議は早期解決が重要かつ必要となり、長引かせるほどにデメリットが大きくなっていきます。
今回はこの改正内容に関して、主に2024年4月施行の「相続登記の義務化」について詳しく解説し、2023年4月施行の改正内容に関しても少し触れていきます。
そもそも相続登記とは?
相続登記とは、不動産の相続が発生した際に行う手続きです。正式には「相続による所有権移転の登記」といいます。 具体的には、不動産の所有者(被相続人)が亡くなった際、その所有権を相続人に移す(書き換える)、つまり名義人を変更することです。 実はこの相続登記をはじめ、不動産所有権に関する登記は、法律により義務化されていません。しかし不動産が売買されることによって所有者が変わったときには、ほとんどの場合所有者移転登記がなされます。にもかかわらず、相続登記に関しては放置されることが多かったというのが、これまでの状態でした。
相続登記をしないとどうなる?相続放棄した場合は?
相続・遺贈による不動産取得を知った日から3年以内に登記・名義変更をしないと、10万円以下の過料の対象になります。また、住所や氏名の変更をした場合、変更の日から2年以内に登記をしないと、5万円以下の過料の対象になります。 このように、決して安くはない金額を負担しなければならなくなる可能性があるため注意が必要です。 また、相続放棄をした場合、相続人ではなくなるため相続登記義務化の規定は適用されません。 ただし、相続放棄は家庭裁判所に申請を行う必要があります。 また、相続放棄には期限があり相続人になったことを知ってから原則3ヶ月以内に行う必要があります。 相続登記義務化の背景
前述したように、不動産に関する所有権の登記は法的義務がないため、相続しても使い道がない土地や空き家、そもそも相続人があいまいなままになってしまっている不動産は、相続登記がされることなく放置されることが多いのです。
その結果、現在国内には膨大な面積の「所有者不明不動産」があります。
相続が発生する段階になっても相続人があいまいなまま登記もされず、その結果本来相続した人からさらに相続人が発生し、どんどん相続人が増えていって、本来の土地の所有者がわからなくなってしまった、という土地が大量に発生してしまったのです。
相続登記は、義務でない以上当面の間はしなくても困るものではありません。そうして所有者不明になってしまった土地が増加していくと、いざ公共事業や再開発の際に所有者に連絡が取れない、手続きに時間や費用が莫大にかかる、というデメリットにつながっていきます。
さらに、固定資産税の徴収も登記をもとに行われます。相続はしているのに登記しているか未登記かで固定資産税の納税のある・なしが発生するという、土地所有者の間で不公平が生まれてしまっていることも問題です。
また、所有者側としても、登記がなされていなくて正確な所有者がわからない土地を売却したり、不動産投資などの利活用をしたりすることはできない、というデメリットが発生します。
このような状態を背景に、国は相続登記の義務化を検討し、2023年4月から順次法律の改正が行われることとなったのです。
相続登記義務化の内容
相続が発生し相続人が決まった時点・自分が相続人であることを知った時点から「3年以内に相続登記をする」ということが、まず義務となります。
遺産分割で所有権を得た場合には、分割が決定してから3年以内に登記を行わなければなりません。
たとえ使い道がない不動産でも、相続登記の義務は生じます。先ほど述べた通り、正当な理由がなく登記を怠った場合には、最大10万円の過料が科されることがあります。
この義務化スタートは2024年4月ですが、施行になったらそれ以前に発生していた相続に関しても同様に登記の義務が生じるところに、注意が必要です。
登記名義人の住所変更などは2年以内
さらに、登記名義人、つまり所有権を持つ名義人の住所や氏名・名称に変更がある場合には、変更から2年以内に変更申請しなければならなくなりました。
名義人が転居などを何度も繰り返して、どこにいるのか所在がわからなくなってしまうことを防ぐために、こちらも義務化されます。
先ほど述べた通り、違反すると、5万円以内の過料が科されることがあります。
相続人申告登記制度の制定
遺産分割協議が長引いている場合の「救済措置」として、相続人申告登記制度というものも新設されます。
これは、相続人のうち誰がどの不動産を相続するかなどの具体的な内容が決まってないことが理由で相続登記ができない場合に利用できるものです。
相続人となる人が住所・氏名などの必要情報の届出さえあらかじめしておけば、相続開始から3年以上経過しても過料の対象とはなりません。
ただし、いうまでもなくこれは相続登記そのものではありません。「相続人が判明していること」を届出することで、一時的に相続登記の義務を果たしたとみなされるわけですが、あくまで「元の所有者が亡くなった」ということを示すに過ぎないのです。
そのため、遺産分割協議がまとまって相続人と相続内容が決まったら、改めて名義変更登記はきちんと行う必要があります。
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